2月中旬の朝4時。シカゴの冬らしい、ラジエーターが激しく音を立て、空気がドライアイスのように冷たく乾燥した夜でした。マヤは生後6週間で、コリック(黄昏泣き)のピークという過酷な時期の真っ只中。私は狭い廊下を3時間ぶっ通しで歩き回り、必死に「シーッ」とあやしながら縦揺れを繰り返していました。左肩は完全に感覚がなくなり、腰は今にも崩れ落ちそうなボロボロの壁のよう。廊下の鏡に映る自分のひどいクマと、胸に縛り付けられた小さくて猛烈に怒っている生き物を見て、「ああ、私はもう一人の人間じゃなくて、単なる生物学的なドッキングステーション(充電器)なんだな」と悟ったのを覚えています。
子どもを持つ前、抱っこひもなんて出産準備リストの1カテゴリーにすぎないと思っていました。ラップタイプやしっかりした構造の抱っこひもを、便利なアクセサリー感覚で買ったりして。でも、赤ちゃんを支える「メインの装置」が実は自分自身だなんて、思いもしなかったのです。自分の体が、他の誰かのための常設家具になるなんて。
私は以前、小児科病棟で12時間シフトで働いていました。ベッドで10代の患者さんの体位変換をしたり、無菌の廊下で重いモニターを運んだりしていたので、自分の体幹には自信があったんです。でも、怒り狂う約3.6キロの“おじゃが”を1日14時間も抱き続けるには、全く別のインナーマッスルが必要だなんて、誰も教えてくれませんでした。体重のバランスを取るために、片方の腰を突き出すような変な姿勢になり、それがじわじわと骨盤底筋を痛めつけ、坐骨神経に突き刺さるような痛みを引き起こすのです。
正しい抱き方についての医学的なアレコレ
いいですか、ボウリングの球のように重い赤ちゃんの頭はしっかり支えなきゃいけませんが、ガラス細工のように扱う必要もありません。新米パパやママは、恐る恐るガチガチに緊張して赤ちゃんを抱っこしがちですが、その硬さがかえって赤ちゃんを不安にさせてしまうんです。
かかりつけの小児科医のグプタ先生は、「背骨のことは気にしすぎず、とにかく気道(呼吸)に集中しなさい」と教えてくれました。赤ちゃんが小さいうちは、顎が胸のあたりにガクッと落ちてしまいがちです。私はER(救急救命室)で、顎が下がることで赤ちゃんの気管が静かに圧迫されてしまうことに気づかず、パニックになっている親御さんを何百人も見てきました。腕に抱いているときも、布製のラップに包んでいるときも、常に赤ちゃんの顔が見える状態にし、首を少し伸ばしてあげなければいけません。まるで、ものすごく繊細で、ものすごくうるさい、たまごっちを常に監視しているような気分です。
また、「3つのゾーンの法則」というのもあります。頭、胴体、そしてお尻を同時に支えるというものです。首がすわる前に脇の下を持って持ち上げると、重い小さな頭が後ろにカクンと倒れて、親のほうが心臓が止まるかと思うほどヒヤッとします。頭蓋骨をしっかり支えながら、股関節から腰を曲げてすくい上げるように抱き上げます。まるでスローモーションで爆弾処理をしているような感覚ですよね。
そして、これだけは我が家で絶対に譲れない医学的なルールがあります。口唇ヘルペスができている人は、赤ちゃんを抱っこするのも、触るのも、近くで覗き込むのも絶対にNGです。大人のHSV-1ウイルス(単純ヘルペスウイルス)はちょっとした厄介事くらいに思われがちですが、免疫力がまだない新生児にどれほど恐ろしい影響を与えるか、私は現場で見てきました。マヤが生後3週間のとき、夫の叔母が唇にかさぶたを作ってやってきましたが、私はまるで用心棒のように物理的にドアを通せんぼしました。大げさだと思われるかもしれませんが、私はただ、自分の子どもをICUに入れたくないだけなのです。
「抱き癖がつく」という迷信は無視して
義母は悪気はなかったのですが、マヤが泣いて私が抱き上げるたびに首を横に振り、「そんなんじゃダメになっちゃうわよ」と言いました。赤ちゃんにも自立を学ばせる必要があると。私はただ義母をじっと見つめ返すだけでした。新生児はまだ、自分が母親とは別の存在だということすら分かっていません。ママと一つの神経系を共有していると思っているのですから。

抱っこしすぎたからといって、新生児がワガママになる(抱き癖がつく)なんてことはありません。睡眠の専門家も発達心理学者も、この点についてついに意見を一致させています。泣き叫んでいる赤ちゃんを放置しても、立ち直る力がつくわけではなく、ただコルチゾール(ストレスホルモン)を急上昇させるだけです。私たちは最初の4ヶ月間、マヤをずっと抱っこし続けていました。トーストを食べる時も、洗濯物をたたむ時も、深夜3時に猛烈な勢いでネットショッピングをする時でさえ、ずっと抱っこひもに入れていました。
ちなみに、前向き抱っこは赤ちゃんの股関節に負担がかかるので、月齢がもっと高くなるまでは試す必要すらありません。
生地選びと、体温を共有するという現実
人間マットレスとして常に機能することの最大の問題は、その熱量です。赤ちゃんは小さなストーブみたいなものです。伸縮性のある長い布で胸に縛り付けていると、お互い汗だくになってしまいます。部屋の中で抱っこするたびにあせもができないように、どんな服を着せるべきか、私は何週間も悩み続けました。
最終的に複雑な服は諦めて、ごくシンプルなものに落ち着きました。オーガニックコットン ベビーボディスーツ(袖なし)が私たちの毎日のユニフォームになりました。オーガニックコットンにほんの少しポリウレタンが入っているだけで、マヤの大きな頭にも格闘せずにすっぽり着せられます。1日6時間も赤ちゃんを体に密着させるなら、天然素材であることは絶対に譲れません。化学繊維は湿気を閉じ込めてしまい、赤ちゃんのデリケートな肌を真っ赤に荒れさせてしまいます。このボディスーツは通気性が良く、洗濯も簡単で、首の後ろにチクチクして赤く跡が残るようなタグもありません。
抱っこひもで赤ちゃんを連れて用事に出かけると、どうしても物を落としてしまうんですよね。鍵、スマホ、おしゃぶりなど。スーパーの床におしゃぶりを落としてしまうのは、本当に悪夢です。胸に赤ちゃんをくくりつけている状態では、そう簡単にしゃがんで拾うことはできません。膝が鳴らないことを祈りながら、ぎこちなくスクワットするしかないんです。
結局、私はベビーおしゃぶりホルダー 携帯用シリコンケースを買いました。マザーズバッグのストラップや抱っこひもに直接ループで取り付けられます。これのおかげで、バッグの底のホコリや謎のパンくずから、予備のおしゃぶりを守ることができます。食洗機で洗えるのもポイントで、今の私には食洗機に任せられるお手入れしかエネルギーが残っていません。レジ待ちの列で赤ちゃんがギャン泣きし始めたら、片手でポンと開けるだけでサッと取り出せます。
親のメンタルを救う、実践的な抱っこの仕方
泣き方によって、抱っこのテクニックも変える必要があります。これは過酷な試行錯誤の中で学んでいくものです。我が家で本当にしんどかった時期に、実際に役立った抱き方をご紹介します。

- フットボール抱き: 買い物袋のように赤ちゃんを脇の下に挟み、頭を手のひらで、体を前腕に沿わせて支えます。帝王切開後の私にとって、傷口に赤ちゃんの体重が全くかからないこの抱き方はまさに命綱でした。ソファに座りながら、空いたもう片方の手でサンドイッチを食べたい時にも最高です。
- 肩のせ縦抱き: マヤには胃食道逆流がありました。グプタ先生からは、授乳の後は毎回必ず30分間、完全にまっすぐ縦に抱っこするように言われました。午前2時に背筋を伸ばして座り、首筋にミルク臭い息を吹きかけられるのは拷問のようですが、重力がミルクを胃に留めておく役割を果たしてくれます。
- お腹圧迫抱き(コリック抱き): お腹にガスが溜まって痛がり、小さな膝を胸に引き寄せているような時は、私の前腕にうつ伏せに乗せるように抱っこしました。お腹にかかる適度な圧力が、市販のどんなお薬よりも効果てきめんでした。
抱っこの向きはこまめに左右を変えましょう。いつも右の腰に乗せるように抱っこしていると、4ヶ月目には左の腰が悲鳴を上げ始めます。筋肉への負担のバランスを取るために、私は意識して利き手ではない方で抱き上げるように訓練しなければなりませんでした。
少しずつの自立へ
やがて赤ちゃんは重くなり、少しだけ手がかからなくなってきます。ギャン泣きされることなく、プレイマットに5分間くらいなら置いておけるようになります。でも、歯固めの時期が始まると、また抱っこを求めるようになります。しかも今度は、ママの鎖骨をガリガリと噛みながら。
マヤは一時期、私の高い抱っこひものストラップをひたすら噛んでは、あちこちに大きなよだれのシミを作る時期がありました。ある日の午後、もう限界だと思ってパンダ 歯固めを渡してみたんです。正直、私たちが持っているベビーグッズの中でベストなものの一つです。食品グレードのシリコン製で、ぽっちゃりした小さな手でも握りやすい形になっており、歯茎でガリガリするのにぴったりな凸凹がたくさんついています。冷蔵庫に入れておいて、私の肩をおやつか何かのように見つめ始めたらサッと渡すようにしました。おかげでマヤの気が紛れ、時々は床に降ろしてあげることができるようになりました。
一人で上手にお座りできるようになった頃からは、床で遊ぶのを促すために彼女のそばにおもちゃを置くようにしました。うちにはやわらかベビーブロックセットがあります。優しい色合いの柔らかいゴム製ブロックです。なかなか良いですよ。マヤは主に、積み木を倒したり、犬に投げつけたりして楽しんでいますが。暗闇でうっかり踏んづけても痛くないのは本当にありがたいですが、ぶっちゃけこの年齢の子にとってはただの飛び道具ですね。将来的には運動神経の発達にも役立つんでしょうけど、今は私が冷めたコーヒーを飲むための「3分間」を稼いでくれる大切なアイテムです。
赤ちゃんの「メインの居場所」になるということは、心身ともにクタクタになる一方で、あっという間に過ぎ去ってしまう時間でもあります。何ヶ月もの間、「背骨を休ませたいから、お願いだから下ろさせて」と願い続けるのですが、ある日突然、犬を追いかけるために腕から抜け出そうとするようになり、腕の中が妙に空っぽに感じるのです。腰痛のピークにいる時は絶対に誰にも認めないでしょうけど、あのズッシリとした重みがちょっと恋しくなるんですよね。
もしあなたが今、眠っている赤ちゃんの下敷きになりながらスマホでこれを読んでいるなら、いつか腰痛は治るということを知っておいてください。たぶん、ですが。
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抱っこに関するリアルなQ&A
赤ちゃんを抱き上げる時に手首が痛いのは普通ですか?
はい、それは「ドケルバン病(腱鞘炎)」と呼ばれるものです。私も骨折したかと思うくらいひどくなりました。親指を伸ばした状態で赤ちゃんをすくい上げるのが原因です。親指をテコのようには使わず、手のひらを平らにして赤ちゃんの下からすくい上げるようにしなければなりません。本当にひどい場合は、お医者さんにサポーターをもらった方がいいかもしれません。
いつになったら首を常に支えなくてよくなりますか?
一般的には4〜6ヶ月頃ですが、少しずつ徐々に、です。赤ちゃんがだんだん強くなり、頭がグラグラしなくなってくるのに気づくはずです。私のかかりつけの小児科医は、一人でお座りできるようになるまでは、赤ちゃんが怒って思い切りのけぞったりした時のために、常に首の後ろに手を添えておくようにと言っていました。
腰が限界です。ラップタイプとしっかりした抱っこひも、どっちがマシですか?
ラップタイプは新生児を胸に密着させるのには最高ですが、親の腰のサポート力はゼロです。マヤが約6.8キロになった時、私はしっかりした腰ベルト付きの構造的な抱っこひもに変えざるを得ませんでした。ベルトがあると、重さを肩から腰に逃がしてくれます。もし腰が痛いなら、赤ちゃんの体重がどこにかかっているか確認してください。赤ちゃんの頭頂部にキスできるくらいの高さが正解です。おへそのあたりまで下がってしまっていると、腰に負担がかかりすぎています。
赤ちゃんが下に降ろすのを嫌がる場合、どうやって家事をこなせばいいですか?
家事のハードルを下げましょう。これ、真面目な話です。数週間の間は、洗濯物がカゴに溜まりっぱなしでも、立ち食いになっても仕方ないと割り切るんです。抱っこひもでおんぶや抱っこをして、気楽に見られるドラマでも見ながら、その時期が過ぎるのを待ちましょう。夜中の3時には「一生このままかも」と絶望するかもしれませんが、その時期は必ず終わります。
親戚に抱っこされて泣いてしまった場合、そのまま抱かせておいたほうがいいですか?
いいえ。あなたは赤ちゃんのPR会社をやっているわけではありません。親戚のおばさんに抱かれてギャン泣きし、ママを求めているなら、返してもらいましょう。赤ちゃんの神経系のほうが、大人の感情よりもずっと大切です。「お腹が空いてるみたい」「眠いみたい」とでも言ってサッと抱き戻し、気まずく感じる必要なんて全くありません。





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